2016年1月2日土曜日

動画リワード広告の特徴および運用について (中年騎士ヤスヒロのケース)

あけましておめでとうございます。
年末には「転生して 108 階まで進んでスクショ撮ってシェア」という #除夜のヤスヒロ というイベントで少し盛り上がりました。


さて、「中年騎士ヤスヒロ」のマネタイズについては、去年 12 月に「アドフリくん勉強会」で発表した内容からさほど大きなアップデートは無いです。
詳しくは コチラのスライド を参照。

時間の関係で、動画リワード広告についてどう最適化しているのか詳しくお話できなかったので、ちょっと突っ込んで解説します。

ヤスヒロでは、Fyber というメディエーションツールを使って動画リワード広告の配信管理をしています。
配信している広告ネットワークは、AdColony, AppLovin, UnityAds, Vungle (アルファベット順) の 4 つです。

 (余談ですがこの Fyber 昔の社名を Sponsorpay といいまして、ポラリスエックス社長の住田が以前日本のカントリーマネージャをしていたドイツの会社です。
 その後アジア撤退しました。(最近また進出しようとしているらしい))

原則としているのは
  • eCPM (1,000 インプレッションあたりの収益) が高いほうから順番に配信
  • Fyber 上で広告ネットワークごとに frequency cap (ユーザーあたりの 1 日の広告視聴回数上限) をかけて eCPM をコントロール
です。

ユーザーの中には 1 日に 1 回しか動画広告を観ないという人もいるので、配信比率でどの広告ネットワークを見せるかを決めてしまうと、そのユーザーに収益性が高くない広告を見せてしまうリスクがあります。
なので、順番を固定して、各ユーザーに必ず eCPM が最も高い広告ネットワークから観てもらうようにしています。

で、周知の通り (だと思いますが) 、それぞれの広告をネットワークについて同じユーザーに繰り返し見せていると、eCPM はだんだん下がります。
広告主にとって効率が悪くなる (1 インストールを獲得するまでに何度も広告を見せていることになるので) ため単価が下がる、同じ案件が複数回配信されることになるため CTR (クリック率) が下がる、など複数の理由があります。

なので、frequency capを調整することで、各広告ネットワークの eCPM をある程度コントロールすることができます。
具体的には、frequency cap をきつくする (1 ユーザーに見せる 1 日あたりの広告表示回数を減らす) ことで eCPM は上がり、ゆるくすることで eCPM は下がります。

いまのところ、AppLovin, Vungle の 2 社でこの傾向が特に顕著です。
(両社の中の人から話を聞く限り、この 2 社はどちらも「インストール」より先 (課金など) で広告効果を測っており、その分インプレッションの "質" が収益性に与える影響も大きくなるようです)
(逆に CPI で広告効果が測られている場合は、何回ユーザーに広告を見せようが最終的にインストールされれば OK なので、インプレッションの質は比較的収益性に影響を与えないのかな...と想像しています)

なので、例えば 12 月にやったことでいうとこんなかんじです。
(ここから先すべて、単純化のために iOS の数字でお届けします)

  1. Vungle の eCPM が上がってきてたので、順位を 2 位から 1 位に試しに上げてみる
    (1 位のことを業界用語で「first fill」といいます)
  2. でもその時点でまだ元々 1 位だった AppLovin より eCPM が低かったので、Vungle の frequency cap を 3/day から 2/day に変更。eCPM の上昇に期待
  3. 数日様子を見る
  4. Vungle の eCPM が以前までの $7-15 から $14-19 に向上していることを確認。喜ぶ
  5. が、やはり AppLovin の eCPM が同じ時期に (2nd fill かつ 3/day にもかかわらず) $15-20 だったので、順位を元に戻す
  6. Vungle の eCPM は $10 前後に落ちる (2nd fill にしたので当然)。AppLovin は $20-28 に向上 (first fill にしたので当然)。
  7. AppLovin の eCPM はもうちょっと低くても良いから表示回数を増やすため、frequency cap を 3/day から 4/day にゆるめる (経過観察中)
  8. Vungle はもうちょっと eCPM 上げたいので、2/day から 1/day にさらにきつくした (経過観察中)

文字だとすげー分かりにくいので、Fyber 管理画面のスクショも貼っておきます。
これの順位 (画面左、緑の数字) を入れ替える (ドラッグ&ドロップで入れ替えられるので便利) のと、frequency cap (画面右、青の数字) を変更するというのが、具体的なオペレーションです。

で、これ見ると UnityAds の frequency cap がめちゃめちゃ甘い (回数が多い) のが分かると思います。
これは唯一上記オペレーションの例外です。

さすが Unity さんやなーと思うのですが、かなりの回数をユーザーに見せていて、しかも順位も 4th fill であるにもかかわらず、eCPM が $6-10 で安定していてそれ以下にほぼ落ちたことが無いんです。
CPI 案件として売っていることと、(最低出稿金額が低くて、ネットワークの規模も大きいので) 案件数が多いんでしょうね多分。

ヤスヒロの動画リワード広告は「15 分 / 60 分に 1 回広告を観てダイヤ / コインを GET できる」という実装なので、広告の在庫が無い (見られない) というのはユーザーにとってマイナス要素で、クレームにつながります。
(Fyber 経由せず、UnityAds と AppLovin を直接組み込んでいたときは、実際そのクレームけっこう多かったです)

そして fill rate (広告表示率) もほぼ 100% なので、UnityAds を AdColony より上に置いてしまうと AdColony の広告は実質ほぼ表示機会がなくなってしまいます。
AdColony の収益性も高くなってくれると全体の底上げになってくれるので、なんとか eCPM を上げられないか試行錯誤したいという目的で、あえて eCPM の高い UnityAds を AdColony より下に置いている次第です。

なので UnityAds は、実際には frequency cap を絞ればもっと eCPM が高くなるであろうことは理解の上で (昔は $14-20 ぐらい出ていました)、あえて「広告在庫を切らさないための最後の砦」役を担ってもらっています。
それでも eCPM $6-10 出してくれているのは優秀、ありがたいです。

ちなみに、広告ネットワークの数をこれ以上増やす予定は今の時点では無いです。
収益・eCPM などの指標は手動で各ネットワークの管理画面から取得して Google スプレッドシートに入力しているので、これ以上増えると管理工数的に無理 (日次での管理が出来なくなる) というのが理由です。

広告ネットワークによって、管理画面を見ないといけなかったり (しかも URL で日付やアプリを指定できない)、CSV を落とさないといけなかったりするので、けっこうこの作業が面倒なんですよね。

AppLovin みたいにレポート API を各社用意してくれないかな... (探せばあるのかな...)

最後は愚痴になりましたが、現場からは以上です。
本年もよろしくお願いいたします。